思春期の子どもたちを支えるために

スマホ依存防止学会が主催する家庭教育講座が九州にやってきます。スマホ依存防止学会は、九州思春期研究会にも講師としてお招きしたことのある磯村毅先生が代表を務める団体です。福岡での開催ですが、2020年2月22日(土)18:30-20:00 [参加費無料]となっております。ちらしを下記に掲載しますので、クリックして見てみてください。

ちらし:スマホ依存防止学会家庭教育講座(福岡市,無料)

ゲーム・ネット依存治療の専門家である中山秀紀先生(久里浜医療センター)によるQ&Aを転載いたします。第15回ポストコングレス大分で大きな反響を呼んだ中山秀紀先生のご講演からの抜粋となります。転載許可をいただきました中山先生に感謝いたします。

久里浜医療センターネット依存治療部門(TIAR)

Question 1

ゲームやネットに依存している子どもには、「とことんゲームやネットをやらせたほうが良い」、「何かにのめりこむことは良いことだ」、「そのうち飽きるだろう」という意見もあるようですが、どうなんでしょうか?

Answer 1

依存的な視点から回答すると、ゲームやネットは「依存物」です。子どもたちがゲームやネットにのめりこむのは、ただ興味関心を持っているだけではなく、「負の強化(ネット・ゲームをしないと不快になる)」が出現するために、ゲームやネット以外の活動が困難になっている可能性があります。そして依存物はやればやるほど「負の強化」が進行していく可能性があります。とことんゲーム・ネットをさせるような対策は避けるべきです。

また依存物は「飽き」がなかなかきません。「飽き」がくるのに場合によっては数百時間、数千時間かかります。1つのコンテンツを飽きたとしても、次の面白いコンテンツが出現します。「飽き」ることを待つのは無謀です。


Question 2

ゲームやネットは「適度」にやらせたほうがやらせないよりも成績が良いといわれていますが、実際どうなのでしょうか?

Answer 2

短期的にみると、多くの青少年にとってネットやゲームをすることは楽しいこと(快楽)なので、ネット・ゲームをすることを目標にすると勉強などをより頑張ることができるかもしれません。

しかし依存はより長期的な問題としてとらえるべきですネットやゲームをやりはじめてからすぐに依存症になるとは限りません。ネットやゲームをやりはじめのころに適切な使用ができて成績があがったからといって、それが3年・5年にわたって(中学生や高校生になって)適切な使用ができているか、成績をあげられるのかどうかわかりません。

そもそも適度にゲームをさせることができなくなるのが依存症です。後述しますが、幼少からゲームをしているとその後の依存度が高くなるという論文もあるので、「依存物」をさせるのはよく気を付けたほうがよいでしょう。

Question 3

ゲームやネットを子供の時から全くさせていないと、あとでそれらができるようになったときに、反動でもっとたくさんやってしまうのではないかと思うんですが、どうなんでしょうか?

Answer 3

依存物をしていなかったからといって、やりはじめたときに「反動」でたくさんしてしまうということはありません。例えば酒やたばこを30歳までやらなかったからといって、その人は「反動」でたくさんするのかというとそんなことはありません。

ネットやゲームの場合、それを与えていない家庭は、まわりの子供たちがやっているのをみても、自分はできないのを我慢しなくてはならないと思われますが、それは前述の「正の強化(ネット・ゲームをすることによって得られる快楽を我慢すること)」が主です(ほかにもいろいろな感情を抱くかもしれませんが)。しかし早期からネット・ゲームを与えると、その後依存しやすくなります。そして依存症によって「負の強化(ネット・ゲームをしていないと不快になる)」を生じます。人間は快楽をがまんすることはそれほど困難ではありませんが、不快を我慢しつづけることは困難です。

依存症の観点から述べると、遅くにネット・ゲームを与えて依存するのであれば、もし早期からそれらを与えていたらともっと激しく依存していたのだろうと考えられます。

Question 4

子どもが「野球やサッカー・勉強をするのは良くて、ゲームをするのはなぜ悪いんだ?」と言います。親としてどう答えればよいのでしょうか?

Answer 4

野球やサッカー・勉強をするのが「良く」て、ゲームが「悪い」ということはありません。野球やサッカーも勉強(?)もやりすぎはよくありません。

ただし野球やサッカー、勉強は大半の人にとって依存物ではない(快楽+飽きない・続けられるの条件に合わない)のに対し、ゲームは多くの青少年にとって依存物です。ゲーム依存には注意をすべきです。

Question 5

子どもが「将来自分はプロゲーマーになるから1日中ゲームをするんだ」と言います。親としてどう答えればよいのでしょうか?

Answer 5

プロゲーマー(ゲームなどでお金を稼いで生活を成り立たせている人)でやっていくためには、高い運動神経や集中力、動体視力などを要します。このため20歳代後半には引退を余儀なくされることも多く、かなり厳しい世界のようです。

プロゲーマーの世界は黎明期なので、まだその道が確立されていません。ゲームが上手なのは必須で、さらにクラブチームに所属したり、スポンサーをつけたりしなくてはならないようです。賞金がたくさん出る大会は海外のものが多いので、英会話能力も必要だと思われます。

バッティングセンターで打ててもプロ野球選手になれないのと同様に、ゲームがうまいだけではプロゲーマーとして成立しないようです。

若者が夢に向かって邁進するのは悪いことだとは思いませんが、「プロゲーマー」という夢を語りながら、ただ漫然とゲームをしているだけのようであれば、方向性を見直す必要があります。